ガチのドラクエオタクが『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を観て感じたこと

今、ドラクエの映画をやってるわけですが、巷では賛否両論と言いつつ、語り好きのオタク層の間では割と非難一色という感じで「そこまで言われるならどこまで酷いものか」という好奇心を刺激されまくったのでドラクエの映画を観に行きました。
筆者のドラクエオタク度はリメイク含めて複数周回しており、LVを99まで上げたりRTA関連の知識が豊富だったりしているぐらいで、学生時代には「ドラクエ博士」と呼ばれて他クラスの人から休日にドラクエの相談電話を貰う程度でした。
特にドラクエVはかなりやったシリーズ作品となっており、主人公の累計レベルは400を超えています。

以下、諸々の感想。作品に関する若干のネタバレを含みます。

作品全体に関して


全体的に淡泊さは感じましたが、ラスト以外に関しては基本的に割と頑張って取捨選択したなぁという印象。
特に演出面はドラクエっぽさを失わない感じで良く3DCG化されており、かなり見応えを感じました。
長編ストーリー物を映画化しようとすると取捨選択面で必ず問題が発生しますが、基本的には部分を切り取って作品化するか無理矢理全部押し込むかの2択になり、今回の基本方針は後者。
後者を選んだ時点で作品として高評価になるのはほぼ無理ゲーのルートだと思われ、そうした無理矢理全部詰め込んだ作品にしてはむしろ見れる部類じゃないかなぁと感じました。
問題のラストに関しては個人的には嫌いな手法ですが、作品全体の価値を決定的に損なう程のものかと言われると疑問。
あの手のやり口は夢オチに似た興醒めを誘うと思いますし、事実かなり興が醒めましたが、まぁ、最悪の終わらせ方は避けていたかな、とは。
作者の込めたメッセージが見え透き過ぎてアレだとか色々と思うところはありますけど。
作品に関して面白く語れる観点のいくつかがこの嫌われラストシーンへの伏線だったりするせいで語りが盛り上がらないのはちょっと残念。
ただ、あのラストが無ければ全体的に淡泊な作品という感じで中評価ぐらいの人が多くなりそうで、ここまで話題にならなかった気もします。
問題のあるシーンで人を集めるマーケティングは嫌いですが、わざとそういうシーンを埋め込んで淡泊にならざるを得なかった作品に劇薬を投入して世に出した可能性はありそうだなぁとか邪推します。

開幕の幼年期端折り


開幕がSFC版のゲーム画面を模した映像が幼少期の映像の代わりに流れるという衝撃的なスタートで、これまた色々と議論を呼ぶのかもしれませんが、ドラクエオタクの私はそんなことよりもビスタ港で幼少期フローラとの邂逅イベントが入っていたことにばかりに目が行くわけです。
このイベントはPS2版から導入され、SFC版には存在しなかったもので、幼女フローラのドット絵を見られる貴重なシーンです。
あとは親分ゴーストへのビアンカの攻撃ダメージが異常に高かったのが印象的でした。
基本的にはビアンカは攻撃力が低いため、親分ゴースト戦はメラかギラで攻撃するのがセオリーなのですが、確か茨の鞭で18ダメージとか叩き出して主人公に近いダメージでした。
「おいおい、こいつ、ビアンカどれだけ育ててるんだよwwwww」
と私は瞬時に感じて笑いを堪えるのが難しかったのですが、周囲の観客に同じ感受性を持った人はいなかったようです。残念。
いや、でも実はこのビアンカの過剰育成は実は伏線で、青年期にビアンカと再会する場面で主人公はまだバギマしか覚えてないのにビアンカはベギラゴン覚えてるんですよね。
いや、この伏線、誰得だよwww
あー、俺得か((((

ブオーンが小さい問題


ブオーンはサラボナの見張りの塔で戦う、原作では恐らく多くのプレイヤーが苦戦した印象深いボスでしょう。
塔と同じ背丈というスケール感の違うボスなわけですが、本作品では人間から比べると大きいけど、モンスタースケールで言うと普通ぐらいというサイズ感でした。
巨大過ぎるものとの戦いを映像化して魅せるのは表現的に逆に難しいという問題もあるかもしれませんし、映像としては割と躍動感があったのですが、原作ファンとしてはブオーンの小物感がかなり気になる感じでした。
しかし、このブオーン、なんと倒された後に仲間になるんですね。
これで全て得心が行きました。
こいつはブオーンじゃなくてプオーンなんですよ!
いや、これ、ダジャレじゃなくてPS2版でクリア後に仲間になるれっきとした公式の仲間キャラです。
プオーンなら仕方がない。
ただ、プオーンにはザキ耐性がないのであの激戦はビアンカのザラキ1発で終わっていた可能性があります。
ボスにはザキが効かないという先入観、良くないですねぇ!

選曲


一度映画を観ただけで勢いで記事を書いているので全曲把握している状態ではないのですが、全体的に天空シリーズを基調にした選曲をしていたように思います。
結構、「XIで成功したから懐古厨を取り込むために適当に選曲しているのでは?」なんて批判を目にしましたが、流石にそれは失礼なレベルで浅いと思います。
懐古厨釣りが目的ならロトシリーズ(特に3)からたくさん持ってくると爆釣れしやすいわけですが、選曲は天空シリーズを中心にしており、ロトシリーズの利用にはかなり慎重だったと思います。
私が気付いた範囲では4曲でうち3曲がエンディング使用曲、1曲は前奏部分だけというかなり意図的に絞った形跡を感じました。
あと、安易に大ボスの曲を使わなかったのも印象的です。
懐古厨は勇者の挑戦(大魔王ゾーマのテーマ)をボス戦闘で流すだけで反射的に泣く生き物なのですが、それを使わなかっただけでなく安易に盛り上げられる大ボスのテーマはオルゴ=デミーラ戦のみの利用に留まっています。
下馬評聞いた感じだと、賛否両論の賛美派は音楽バフだけで感動しちゃった人たちなのかなーという感じでしたが、この作品では音楽はむしろひたすら裏方に徹して主張していなかったように感じます。

謎のサイクロプス、ゴールドオーク推し


他にも見逃した要素はあるかもしれませんが、パッと気付いた範囲でドラクエ5に存在しないモンスターが2種登場していました。
しかも、この2種、やたら登場回数が多く、恐らく意図的にやっていると思われます。
それがサイクロプスとゴールドオークです。
サイクロプスはギガンテス種の青いやつ、ゴールドオークはオーク種の毛が金色のやつです。
この2種はギガンテス種、オーク種のモンスターの中で比較的省かれやすいです。
本来、これらはギガンテスとオークのポジションだったのですが、ギガンテスは石化中のシーンで登場しているし、オークは基本種族だしスタッフロールでオークキングとゴールドオークでまとめて「オーク」の扱いになっており、誤って混入したものとはとても思えません。
他にも、ビアンカが使用する呪文が原作準拠だったり、大神殿でのモブ魔物にちゃんとラマダが混じっていたりと、ストーリー面で端折ったこともあってか、基本的には驚くほどドラクエ5の設定に忠実な造りになっている中でここだけ弄っているのが逆に面白かったです。
これはスタッフの遊び心で入れた間違い探しなのかなー、とか。
これが大神殿モブがラマダじゃなくてアトラスだったり、ドラクエ5のモンスターテーブルに存在しない人気魔物が出てきてたり、ロト楽曲使いまくりだったりしたらガン萎えも良いところな部分なわけで、そのあたりの繊細な気配りにはかなり好感を感じます。

グランバニアの霊圧が消えた


主人公がフルネームでグランバニアを名乗っているため、ヘンリー王子とかにはこれだと流石にグランバニア王家の者だってばれるんじゃないかとか思っていたのですが、チゾットの山道を超えるとそこはどうも妖精の国らしく、どうやらこの世界にはグランバニアは存在しないようです。
マジかw
じゃあ、オープニングで流れてた王宮はどこの王宮なんだよwww
そもそもグランバニアが無いとマーサが捕まらなくて物語進まないんじゃないのか???
など作中個人的に最も謎を呼んだ部分です。
このあたりはガッツリ考察するとラストへの伏線の一環としてワークしてる説もあるのですが、ラストシーンは個人的に嫌いなのであまり考察する気になれません(ぁ
他にもプサンとマーサはメタ視点を交えて話をしているとか色々と考えると考えられそうな要素が散りばめられていて、「如何にも」という感じではありました。
どうでも良いですが、一緒に見に行った友人と、マーサの「今回のミルドラースは強い」発言に対し、ミルドラースが3種の個体からランダムに選択されるボスだってことのオマージュかなみたいな話をしたのが一番笑えました。
ミルドラースは弱個体を引くまでリセットするのが低レベル攻略の基本であり、RTAでは弱個体が出るようお祈りするものです(

全体として


作品全体として、絶賛できるようなものだとは決して感じませんでしたが、超が付くほどコアなファンであれば相当楽しめる要素は多かったように感じました。
ライトな人は原作とどう変わってるのかという大筋だけでも楽しめるかもしれません。
ラストシーンがアレなせいで色んな人からボロクソに言われていますが、割と丁寧な造りにはなっており、その丁寧な部分を楽しんでれば原作ファンなら原作ファンにしか出来ないような楽しみ方が出来る作品かなーとは思いました。