スラリンが大器晩成であるという欺瞞

ドラクエ5のスラリンはLV99になるとしゃくねつを覚えます

ドラクエ5をやったことがある人ならほぼ全ての人がスライムを仲間に入れたことでしょう。その仲間になるスライムの一匹目の名前がスラリンです。ほとんどの人が、冒険の途中までパーティーに入れ、馬車の主となり、強い仲間が揃ってきたところで、置いておけなくなってモンスターじいさんに預けに行く。そんな体験をしたんじゃないかと思います。
さて、このスラリン(というかスライム)ですが、ドラクエ5でLV99まで上げると最強の特技である「しゃくねつ」を覚えるわけです。ラスボスやエスタークも使ってきてパーティーを苦しめる最強の技。
そんな技を覚えるスラリンを見て大器晩成であるという印象を持つ人は多いでしょう。この記事を書こうと思ったのも、ネット巡回で

DQ5のスライムはLV99で「しゃくねつのほのお」を覚える。
http://yuki3mori.hateblo.jp/entry/20151207/1449492028

というような記事を見たからでした。スラリンを大器晩成と見立ててロマンに溢れる語りを行っています。確かにスラリンはLV77でMP0でHPを500回復する「めいそう」を覚え、LV99で「しゃくねつ」を覚えます。私はやり込み肌のプレイヤーでしたので、スラリンのレベルを99に上げ、ちゃんと「しゃくねつ」を覚えさせました。


LV99のスラリンは役に立つか

さて、「しゃくねつ」を覚えたスラリン。
もはや盤石。敵なし。パーティーの一線でバリバリ仕事するエリートモンスターになりました!

とはならない。

大変残念なことにそうはならないのです。
確かに「しゃくねつ」は覚えました。でも、そんなスラリンにも大きな問題がいくつかあります。
その中でも致命的な問題が、

・そもそも「しゃくねつ」は強くない
・耐性が紙だからHPがガンガン減る

の2点。本当に致命的な問題なわけです、これらは。
まず、一つ目の問題ですが、そもそも終盤にもなると「しゃくねつ」に対して耐性を持っているモンスターがわんさかいること。「しゃくねつ」を軽減して60ダメージ程度まで抑えてしまうモンスター。そもそもブレス耐性万全で「しゃくねつ」のダメージを0か1にしてしまうグレイトドラゴン先生他。
スラリンは特別レベルが上がるのが早いわけでもありません。スラリンがLV99になる頃には物理で殴って200ダメージ以上の世界。破壊の鉄球でギガンテスが殴れば全体に平均して「しゃくねつ」相当のダメージを安定して入れることは容易いわけです。
わざわざモンスター全員に「しゃくねつ」耐性が無いことを確認して放たなければいけない「しゃくねつ」と、何も考えずにAボタンを連打していたら戦闘が終わる物理攻撃と。どちらが使いやすいかは火を見るよりも明らかです。また、戦いのドラムなんてチートアイテムがあって物理攻撃の強さに拍車がかかるわけです。
「しゃくねつ」なんて、エフェクトを何回か見て飽きたら終わりです。そして、スラリンが習得するよりも早く、ある人はヘルバトラーが、ある人はグレイトドラゴンが「しゃくねつ」を習得し、その役割がスラリンに回ってくることはないのです。。。
そしてもう一つの致命的な問題が耐性の悪さ。元の耐性が無い癖に装備品にも特別恵まれているわけではありません。敵の強攻撃の代表格である「しゃくねつ」も「かがやくいき」も「イオナズン」も全てスルーして大ダメージを受ける。かと思えば忘れた頃に現れるホークブリザードのザラキで息の根を止められる。
同じくLV99まで上がるスライムナイトのピエールは最初から最後までエリートコース。序盤は「もえさかるかえん」を軽減して溶岩原人をばったばったとなぎ倒したかと思えば、終盤でも「イオナズン」、「しゃくねつ」と一番防ぎたいところをガッツリガード。
攻撃呪文は「イオラ」までしか覚えないまでも、「ベホマ」が使えるので回復はバッチリ。攻撃は呪文よりも物理が強いゲームですので、何かを覚えることはそこまで必要とされないのです。(せいぜい「やまびこのぼうし」+「メラゾーマ」に人権がある程度)
装備にも恵まれており、2回攻撃が可能な最強の武器「はやぶさの剣」で超効率の打点を、あまつさえ会心の一撃を振りまきながら叩き出していくわけです。
ピエールは最初から最後まで一貫してエリート。スラリンが苦労の末「しゃくねつ」を覚えた頃にはピエールは遥か彼方、永遠に手の届かない別世界の住人なんですよ。
ちなみに「しゃくねつ」使いとしてライバル候補になってくるグレイトドラゴンのシーザーはブレス耐性無敵なのでやっぱり強いです。スラリンは「しゃくねつ」使いとしても二流…


本当に伸ばすべきものに注力すべき

そんなわけで、スラリンはどうやっても所詮は二流であることが解りました。そんなスラリンですが、一貫して駄目な子というわけではないのです。スラリンはLV10でスクルトを覚えます。高めの素早さで先行してスクルトを唱え、戦闘を優位に進めるサポートが出来ます。
また、主力メンバーのMPが尽きた洞窟の中。リレミトのMPを残すのを忘れてた、どうしようと考えて馬車の中を見渡すとスラリンがリレミトを覚えていることを思い出すわけです。スラリンのリレミトでパーティーは事なきを得ます。(ルーラも使えたら良かったんですが。)
別にスラリンは一貫して使えない子だったわけではないのです。役に立つ場面はきちんと存在し、そこは過ぎ去った。役割を終えたスラリンには引退後の生活をモンスターじいさんの元で幸せに暮らして貰うのが筋というものです。引っ張り出してきて無理矢理LV99まで上げ、前線で戦って貰うのが幸せではない。

人間は自分の能力にせよ何にせよ、伸び悩んでいるものを苦労して伸ばすことに不当に高い価値を置いてしまいがちです。ですが、最終的にそうして鍛えたものは大して素晴らしいものでは無かったりするわけです。そう、育成が完了したスラリンのように。

そんなわけで、アナロジーとしてスラリンを用いるなら、努力は報われるというアナロジーとしてよりも、方向性を誤った努力は結果として悲しい結末を生むというアナロジーとして考えた方が深いと感じるのです。伸び悩んでいる能力に関しても、捨てられるものはサクっと切り捨て、伸ばすべき能力に労力を向けることが重要ではないでしょうか。


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