そんな伝え方で大丈夫か?『伝え方が9割』佐々木 圭一(著)の書評まとめ


書評

博報堂でコピーライターに配属された著者の佐々木 圭一氏が、伝えることが得意では無かった配属当時の苦悩から「伝える技術」に気付いて成功していく、その経験と発見した技術を綴ったベストセラーです。
タイトルからは「人に物事を理解してもらうための技術」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、どちらかというと「人に思い通りに動いてもらうための技術」を紹介するような内容になっています。
本の中で紹介されている技術は細かく見ると多数あるのですが、大きく分けると「相手の"No"を"Yes"に変える技術」と「「強いコトバ」をつくる技術」とに分けられます。


相手の"No"を"Yes"に変える技術

この技術は3つのステップに分かれています。

(1)自分の頭の中(お願いや願望など)をそのままコトバにしない
(2)相手の頭の中を想像する
(3)相手のメリットと一致するお願いをつくる

具体例として、好きな人をデートに誘いたい時という例が挙がっています

(1)自分の頭の中(お願いや願望など)をそのままコトバにすると、「デートしてください」になるが、そのまま言葉にはしない
(2)相手は私とデートしたいわけではないが、美味しい物を食べたいとは思っているはずだ
(3)相手のメリットと一致するお願いとして「驚くほど旨いパスタどう?」という誘い方をしてみよう

このような形になります。
他にも様々な例が挙がっていますので、「自分ならこんな場面ではこう言ってみるかなー」と想像しながら読んでみると非常に面白いと思います。


「強いコトバ」をつくる技術

情報が溢れている昨今では、目立つ言葉を使わないとそもそも気付いて貰えないという現象が発生します。そんな中でも気付いて貰うためのテクニックが「強いコトバ」をつくる技術というわけです。
「相手の"No"を"Yes"に変える技術」は対人関係で使えるテクニックの話でしたが、これはどちらかというとコピーライティングの技術の話かなと思います。紹介されているテクニックは、

・サプライズ法
・ギャップ法
・赤裸々法
・リピート法
・クライマックス法

の5つです。
この本の評価は良く付けている人と悪く付けている人が結構別れているのですが、この辺りのテクニックの話のせいなのかなと推測していたりします。
まず一つ目に「伝え方が9割」という本のタイトルから予想される読者層はコピーライターやブロガーというよりは、人間関係で困っている人達の方が多そうに見えます。ですが、それなりの量が「強いコトバ」をつくる技術という人間関係にあまり活かしにくい内容に割かれているというのはマイナスポイントでしょう。
また、これらの5つの手法自体がどこかで聞いたことがある手法だなぁ、という感じを正直受けてしまうので、文章表現のテクニックとしてもそれほど目新しさを感じないため、テクニック目当ての人としてもちょっと食傷してしまうのかな、と。

…余談ですが、この本のタイトルって上記5つのどのテクニックでも説明出来ない気がしますよね。
「伝え方が9割ってそんな馬鹿な!」と思う読者の心理を逆手に取ったギャップ法とも言えるとは思うのですが、『人は見た目が9割』というもっとセンセーショナルなタイトルの本があったことの方が先に想起されます。
そもそも何について「伝え方が9割」なのかよく解らないけど、根拠の解らない、得体のしれない自信のようなものをタイトルから感じられてしまい、それが気になってしまうんですかね?


所感

そんなわけで、僕個人はこの本の面白い部分は「相手の"No"を"Yes"に変える技術」の部分に集約されていると思います。
ですが、「驚くほど旨いパスタどう?」なんて言われてホイホイと二人きりで食事に行ってくれる人なんて、最初から「僕とデートしてください!」でもデートしてくれるんじゃないか、とか思わなくもないです。
実際には「驚くほど上手いパスタどう?」と誘ってグループで一緒に食事して、さりげなく隣の席に陣取って会話を繋ぐ。そんでもって「本当に美味しい!」という共通体験を作って仲良く話せるようになった上で「あなたのことが好きです。デートしてください!」みたいなもうちょっと複雑なプロセスが必要だと思うので「9割は盛りすぎでしょー」とか思います(笑)

とはいえ、相手が欲しているものはなんだろうと少し考えれば"Yes"を貰える場面で自分の欲望だけぶっちゃけて"No"と言われている事例は山ほどあると思います。営業の方とかも。
そもそも考えても共通のメリットが無い場面なんかも想定されるわけで、万能な手法とは言えないと思いますが、この本の事例や、そこから想像力を膨らませてシミュレーションした内容を応用すると驚くほど上手く行くことは多々あると思います。
9割でも万能でもないとは思いますが、コミュニケーションの起点として習熟しておくのに非常に有用な考え方だとは思いました。




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