『シンプルに考える』森川亮・著の書評まとめ


単行本1620円 Kindle版1080円

書評

LINEの元CEOである森川亮の初著作です。

・ビジョンはいらない
・部下のモチベーションはあげない
・経営理念は文書にしない
・計画はいらない
・仕組みでは成功できない
・会議はしない
・情報共有はしない
・差別化は狙わない

といった一般的に是とされている事柄を否定するセンセーショナルな言葉が人目を引きます。
タイトルの『シンプルに考える』とはひたすらユーザーのことをだけを考えるということを指します。これは、「現場はひたすらユーザーのために全力を尽くす。経営は、現場が仕事にとことん集中できる環境を守る」という本書の言葉に象徴されているでしょう。
例えば、部下のモチベーションはあげないというのはそもそも「ユーザーのニーズに応える情熱と能力をもつ社員だけを集める」ことで、モチベーションをわざわざ上げるまでもなく最初からモチベーションが高い人間だけでやるということを指します。また、差別化は狙わないというのは、ユーザーにとって本当に重要なことは何なのかを考えることが本質であり、そこを追求し続けることで結果的に差別化が為されるということを指しています。
上で挙げたようなセンセーショナルな文句はそれらを目的・手段として利用することを否定したものです。全てはユーザーのことを考え続けた結果であるべきだというのが本書の考え方です。


どんな人向けの本か

シンプルに考えるを読むにあたり、役割に応じて様々な読み方が可能だと思われます。

経営者
多くの経営者の言説を聞いていると、理想状態はこの本で言っているような状況だと思っている方が多い気がします。スタートアップなど経営者になりたての方は勉強として読んでみると面白いかもしれませんが、経営者としての経歴が長い方は初心に戻って物を考えてみるきっかけにしてみたり、共感を感じることで楽しむといったことの方が読み方として多くなりそうです。

リーダー・マネージャークラス
メンバーの採用に関して全権を持っていることは少ないと思いますので、「ユーザーのニーズに応える情熱と能力をもつ社員だけを集める」なんてことは難しいと思います。ですが、誰を重用すべきか、どんなチームにすべきかを考える上では大いに参考になるのではないかと思います。
現実的にはこの本に書いてあるような理想状況になっていることはまず無いでしょう。
地位やお金によらずモチベートされている社員がどれだけいるでしょうか。やる気を失っていない社員がどれだけいるでしょうか。
この本に書いてあることはあくまでも「考え方」です。例えば部下のモチベーションを上げない方が良いと言われてそれを真に受けて「手段として」部下のモチベーションを上げない手法を選ぶことはこの本の本意ではありません。
この本に書いてある例を受けて自分の頭の中で構築し直し、どうすれば最もユーザーが幸せに出来るか、どうすれば最もユーザーを幸せにすることを目指すチームが出来るか。それらを考えるきっかけ、または参考とする本として読むのが良いかと思われます。

一般社員・新卒
メンバーレベルでこの本を読んで自分を取り巻く環境を変えるというのは極めて困難でしょう。ですが、付いていく上司をある程度選べる場合や、就職・転職を行う際に相手を見極めるための軸としてこの本の考え方を持っておくと不自由な思いをしなくて済むかもしれません。
また、経営者が抱く理想の社員像は概ねこの本にあるような社員です。なので、自分をどのように相手に見せると評価が高くなるかを考える上でこの本の考え方を身につけておくと上にも行きやすいし、就職・転職でも有利になることでしょう。

これらはパッと思いついた読み方の一例です。
状況に対する処方箋ではなく、考え方を徹底的に記述した本ですので、「そうは言っても現実と理想は違うよね」といった感情を抱きやすいと思います。
ですが、このような考え方に立ち返って今自分が置かれている状況を分析しなおすと、何か自分がすべき道筋が見えてくるかもしれませんよ。




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